地元の空き家調査など、おの設計でも空き家・空き店舗問題に携わるようになってから3年以上が経過。今や全国各地で空き家問題解決へ向けてさまざまな取り組みが動き出していますが、先日のニュース記事で気になったものが。

空き家の利活用を促進させるために、宮城県塩釜市のシルバー人材センターが地域の高齢者を対象に民間資格「木造空き家鑑定士」を持つ会員を育成するというものです。

最初にこのニュースを見たときは「いい取り組みだな」とも思ったんですが、よくよく考えてみると「う~ん」と首をひねりたくなる部分も。実際に空き家問題に取り組んできた立場から、この取り組みについて少し考えてみたいと思います。

空き家イメージ

「空き家鑑定ができる人がいない」訳ではないということ

まず、「空き家の鑑定ができる人がいない」という訳ではないということです。

特に資格がなくても、木造住宅を多く手掛けている建築士や大工さんなら、普通に建物の現状を把握することができます。それなのに、なぜ敢えて一般の人にわざわざ資格の勉強をさせてまで新たな制度をつくるのか。

まして、記事内容によると


状態に応じて(1)解体(2)修繕後の活用(3)流通活用-のいずれかを勧める鑑定書をまとめ、家屋に使われている構造部材の評価額も提示。


するとのこと。

勉強したとはいえ決してプロとは言えない方に鑑定書を発行させ、解体にせよ修繕にせよ数百万のお金が動く最終決定を促す資料として用いるというのは、いくら何でも責任が重すぎるのではないでしょうか。

こうした調査や鑑定は、プロが責任を持ってやるからこそ価値があるもの。問題解決を急ぐばかりに安易に裾野を広げるのは、後々大きな問題を引き起こしかねない危険をはらんでいるのではないかと思うのです。

空き家の知識を得て、地域にそれを広げる「伝道師」的な役割を

・・・・と書きましたが、高齢者の方が空き家について勉強することを否定する訳ではないんです。むしろ、知識を深めることは空き家問題の解決へ向けて大きな一歩になると考えています。

私が良いと思うのは、高齢者の方々に「鑑定」をしてもらうのではなく、勉強して得た知識を近所の方に伝えて、空き家の利活用や解体について考えてもらうきっかけを増やしていく「伝道師」的な役割です。

空き家が生まれる仕組みは、高齢になったご夫婦や1人暮らしの方が亡くなったり施設に入るようになったりして、やむを得ず空き家になってしまうパターンがほとんど。

ということは、その家に最後に住んでいる高齢者の方が「今後」をどう考えているかで、その家が空き家になるかならないか決まってしまう場合が多いということになります。

自分がいなくなった後、この家は息子たちが住むようになる。
いやいや、もう誰も使う人はいないから、壊してもらうよう費用を貯めている。

そんな方針が決まっていれば良いのですが、そこまで考えがまとまっていない方が大多数です。いざ不測の事態が起きたときに困ってしまうのは、遺された子ども・孫世代の人たち。そうなる前にしっかりと方針を決めておき、何が起きても大丈夫な状態にしておくことが大事だということです。

最近は、「終活」「エンディングノート」といった言葉を耳にすることもあります。

そこまで大仰にせずとも、空き家について勉強した地域の方が、世間話の中で近所の方へさらにその話を伝えていく。そうして空き家問題について理解を深めていただき、「空き家」になる前に問題を解決してしまうことが、今後空き家を増やさないためのキーポイントになるのではないでしょうか。

どちらにしても、空き家問題の解決には「地域で地道な取り組みを行っていく」ことが何より大切。引き続きおの設計でも、地元の空き家問題解決に向けてじっくりと取り組んでいきたいと思います。


おの設計イラスト

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