先日、中古住宅の調査をするための資格「既存住宅状況調査技術者」の更新講習を受講してきました。3年前に新規受講をしてからの、初めての更新になります。

ですがこの調査、正直言って普及していません。私は昨年、縁あって4件ほど調査に携わることができましたが、同じ更新講習を受けた知人は全く調査はしていないとのこと。実はそうした人が多いのではないかと感じています。

そこで今回、この調査制度について改めて考えてみたいと思います。

既存住宅状況調査_テキスト

調査希望は全体の僅か6%! 制度自体が知られていないという事実

まずご覧いただきたいのがこちら。国土交通省で令和元年度に実施した、「既存住宅状況調査」の実施状況に関するアンケート調査の結果です。

既存住宅状況調査_斡旋状況
既存住宅状況調査の実施状況に関するアンケート調査結果(令和元年度 国土交通省実施)より抜粋

これは宅建業者に聞いた「既存住宅状況調査」の実施状況ですが、説明を読むと、この調査をやってみたいと思った人が媒介契約件数の僅か6%しかいないということが分かります。あまりにも少なすぎる数字です。

一方で、調査の必要性を感じあっせんを希望した場合、9割は実際に調査を実施しているとのこと。「調査が必要」と感じた人と「知らない・必要ない」と感じた人のギャップが大きすぎる印象を受けます。

そして、もう1つの調査結果もご覧ください。

既存住宅状況調査_調査の課題
既存住宅状況調査の実施状況に関するアンケート調査結果(令和元年度 国土交通省実施)より抜粋

調査の資格を得た技術者が感じている課題について聞いた結果、最も大きなものが「制度がまだ認知されていない」というもの。調査を実施しない理由にある「調査の依頼が見込めない」という内容も併せて、一般への制度の周知が全く進んでいないということが透けて見えてきます。

実際私も、建築・不動産業界以外の一般の方からこの制度が話題に上ったことは1度もありませんでした。更に言えば、業界の中でも今回私が調査に携わるきっかけになった不動産業の知人の方との間で話題に上るだけで、他の方と話をした記憶はありません。寂しい事実です。

Twitterアンケートの結果では「費用が安ければやりたい」

それでは、こうした調査制度があると分かった一般の方はどう感じるのだろう?

ふとそんなことを感じた私は、日頃から活用しているTwitterでアンケートを取ってみました。その結果がこちら。

既存住宅調査Twitterアンケート結果

こちらを見ると、調査に前向きな上の2項目を合わせると73.9%に。中古住宅への漠然とした不安を払拭するために、できれば調査をしたいと考えている人が意外に多いことが分かります。

ただ気を付けなければいけないのが、「半額ならお願いするかも・・・・」にあるように、費用の面でネックを感じているということ。アンケートに寄せられたコメントには「出しても20,000円くらいまでじゃないかな」といったものもありました。

アンケート内で費用を10万円程度と書いたのは、福島県内での基準を参考にしたものです。

(一社)福島県建築士事務所協会で参考資料として公開している金額だと、戸建てで150平方メートル以下の住宅で図面なしの場合、147,840円という試算が出ています。

また、福島県では「既存住宅状況調査」に関する補助制度を実施しており、その金額が37,500円。これは調査費用の半額程度を想定しているということから、調査費用全体としては75,000円程度と見越していることが分かります。

両者の中間的なキリの良い金額ということで100,000円と提示しましたが、一般ユーザーからの目には若干高く感じられたようです。

「木造住宅耐震診断」が150,000円程度でできてしまうことを考えると・・・・

私自身この金額を見て感じるのは、もう少し費用を出せば「木造住宅耐震診断」ができてしまうよなぁということです。

「既存住宅状況調査」の調査内容は、状況を見た目で判断する目視が基本。まあそれは当たり前と言えば当たり前なんですが、例えば床下や天井裏など普段の生活で見えない部分に関しては、点検口からぱっと顔を出して覗いてみる程度の調査になるんですね。報告書も、現状劣化・破損が見られる部分を指摘するまでに留められています。

状況調査の様子

「木造住宅耐震診断」は、目視調査に加え床下・小屋裏等も中に入っていって、見られる部分はできるだけ確認する詳細な調査に。それに加え報告書は、建物の現状の耐震性を評価するとともに、どこを改修したら地震に強くなるかという補強計画までがセットになってきます。

ここまでの内容で、費用は150,000円程度。自治体が補助に対応していれば、調査依頼者の手出しは6,000円程度で済む場合もあります。

・・・・であれば、「既存住宅状況調査」より「木造住宅耐震診断」の補助を拡充し、中古住宅の売買・賃貸時に診断をすることができれば、より詳細な、安心感の増す調査結果が得られるのではないかと思うのです。

過去にブログにも書きましたが、「木造住宅耐震診断」も年々応募が少なくなり、このままの状態が続くと自治体の予算も削減されてしまうのではないかという懸念があります。

木造住宅耐震診断の応募者が減少。補助金を打ち切る自治体が出る可能性も

なかなか普及が進まない「既存住宅状況調査」と、希望者が少なくなってきている「木造住宅耐震診断」。それぞれの良い部分を重ね合わせ1本化するとともに、建築・不動産業界に周知を徹底し、物件のやり取りが発生したときに診断をしてもらえるよう補助を拡充する。

そうすれば現状以上に中古住宅の調査が進み、ひいては購入者の安心感=中古住宅の流通促進につながるのではないか---そんなことを感じたところです。

 

いかがでしたでしょうか? 全国的に空き家が増えているという話から考えても、今後中古住宅の取り扱いがどんどん増えていくと思われます。そんな中、きちんと調査・診断がされた住宅が増えるというのは、事業者・購入者双方にとって良いことですよね。

現状の制度も含め、中古住宅を取り巻く流れが良い方向に向かえばいいなと思います。


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