定期購読している建築専門誌「日経ホームビルダー」に、とても興味深い記事が。

「バリアフリー不要」が70代で最多

上記リンクのネット上の記事は会員限定のため冒頭部分しか見ることができないのですが、不動産関連の比較査定サイト「リビンマッチ」の調査によると、自宅のバリアフリー化が「必要ない」と考える人の割合が、50代の14.5%、60代の17.8%に比べ、70代が26.8%と最も高い結果になったというのです。

最も必要だと思われる70代で、バリアフリー不要だというこの結果。どうしてなのか少し考えてみました。

バリアフリーイメージ

70代だけを見ても、バリアフリーを意識しない人の方が多数

冒頭では年齢で比較した結果を出してみましたが、70代の中だけで見てみるとどうなるか。それが下の結果になります。

■自宅のバリアフリー化について考えたことがありますか?(70代の結果)

・既にバリアフリー化している:17.1%
・今後必要だと思っている:29.3%
・まだ考えたことはない:26.8%
・必要ないと思っている:26.8%

70代の人でもバリアフリーを意識している人はいますが、「まだ考えたことはない」「必要ないと思っている」の2つを足すと53.6%。半数を超える結果となっており、やはりバリアフリーが不要だと考えている人が多いという結果になります。

まだ若い世代なら「考えたことはない」というのも分かりますが、高齢になり身体の自由が利かなくなってくる70代でもバリアフリーが意識の外にあるというのは不思議なところです。

後を継ぐ人もいない家にお金をかけて改修しなくても・・・・という想い

そこで思い出したのは、過去に住宅の耐震診断を行い、その結果をお客様に説明したときのことでした。

70代で1人暮らしをしていた、診断依頼者のおばあちゃん。古い家だったので、もちろん耐震診断の結果も悪く

「改修した方がいいという結果になったんです」

というお話をしたのですが、

「誰も家を継ぐ人もいないし、今さらお金をかけて改修するよりは保険にでもお金をかけるから、わざわざ直さなくてもいいんだ」

と、笑いながらのお返事。

確かにそうなんですよね。お金をかけて耐震改修工事をした方がもちろん安全な建物になり、大きな地震が来ても安心して暮らすことができるようになります。

ですが、上のおばあちゃんのように1人暮らしで後を継ぐ人もいない。そうした状況で、大事な老後の資産を家の改修に使ってしまうことが果たしてベストなのか。その人の状況を踏まえて、今後の生活設計をしっかり考える必要があると思います。

バリアフリー化に関しても、同じような感じなのかなと。

70代というと、今後の生活を考えて少しでもムダなお金を使いたくないと考えてもおかしくないところ。家の改修という大金がかかることにお金を使いたくないという気持ちも分かります。

住み慣れたわが家の「不都合」は、住む人にとっては当たり前の日常

また、もう1点。

長い間暮らしてきたわが家なら、ちょっとした段差や戸の開け閉めなどの不都合も、苦を苦とも思わず「慣れ」で日々を過ごしていくのが日常だと思います。「当たり前」のことを、今さらお金をかけて直そうとはなかなか思わないですよね。

耐震改修もそうですが、バリアフリー改修も工事後のメリットが分かりづらいというのが正直なところ。少しの段差がなくなれば、ここに手すりが付いていれば---という話はできても、今特に問題と感じていないものがどう良くなるのか、実感してもらうのは難しいところです。

和室の段差

バリアフリー化は、できることならもちろんやっておくべき!

70代の方が自宅のバリアフリー化を「必要ない」と考える理由を、自分なりに読み解いてみました。きっかけとなった記事にはその理由まで書かれていなかったので「正解」は分かりませんが、そう的外れではないとも思います。

ですが、できることなら自宅のバリアフリー化はやっておくべきです。

日常生活の中で最も事故の発生件数が多い場所は、屋外や公道ではなく、圧倒的に自宅の室内が多いという結果も。

平成27年版高齢社会白書(全体版):内閣府

あって当たり前だったわが家の段差も、自然な身体の衰えとともに無視できないバリア(障害)になります。「今まで大丈夫だったんだから」と意識しない状態から不意に転倒してしまい、その後寝たきりに・・・・なんてことにもなりかねません。

自宅のバリアフリー化は、大事な「転ばぬ先の杖」。

もし家を修繕・リフォームする機会があるのなら、ぜひバリアフリー工事も一緒に実施しておくことをお勧めします。

おの設計の家づくりコンセプトのひとつ

福祉住環境コーディネーターと取り組む 高齢になっても暮らしやすい家づくり

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