今回は、先日行ってきた現場のお話です。住宅ではなかったのですが、木造の建物の「筋かい」と金物の検査に行ってきました。
「筋かい」は、木造の建物が地震や風の力に耐えるために必要な、大切な要素のひとつ。しっかりとした検査を行うことが必要です。
「筋かい」をバランス良く配置することで、ねじれや歪みのない強い建物に
上の写真の中央に、窓が入る前の窓枠だけが付いていますが、その左側に斜めに入っている木材が「筋かい」。この「筋かい」を建物の中の壁にバランス良く配置していくことによって、地震や風の力に耐えらえる、またねじれや歪みの起きにくい強い建物になっていきます。
上の写真は、筋かいと柱・梁が繋がっている部分を写したもの。中央付近に四角に見える銀色の金物が、筋かいを留めるための金物です。この金物にもいくつもの種類があり、設計・施工時に間違えないようにきちんと確認しなければいけません。
勝手な変更はかえって建物を弱くすることも。設計通りの設置が大事
そしてこの「筋かい」は、設計時に計算した通りに現場で施工していくことが重要です。場所はもちろんのこと、斜めに入れる向きも左上になるのか右上になるのか、設計図の通りに入れなければいけません。
大工さんによっては、
「強くなるように図面より多めに筋かいを入れておいたから!」
などという方もときどきいらっしゃいますが、これ、実は良くないことなんです。
というのも、筋かいを設置する場所や向きによって、筋かいを取り付けた柱に設置する金物の種類が違ってきてしまうから。
上の写真は、柱の足元(※柱脚といいます)に入っている金物の写真。建物が地震や風の力を受けたとき、筋かいが取り付いた柱には建物の変形を防ぐために大きな力が加わりやすく、それによって柱が抜けてしまう可能性も出てきてしまいます。その柱が抜けないように施工するのが、写真にある金物という訳です。
例えば、この柱に取り付けてある筋かいの向きが図面と違ったとき。また、図面では筋かいが斜めに1本しか付いていなかったのに、Xになるように2本取り付けてあったとき。
その場合、設計段階で想定していた金物とは別のものが必要になるため、再計算が必要になってしまいます。大工さんが良かれと思ってやったことでも、図面と違うことで一歩間違えば法律に合わない不適合建築になってしまう。設計図から変更する部分がある場合は、十分な打ち合わせ・確認が必要になります。
こういった部分が正しく施工されているかどうかは、建築主となる一般の皆さんにはなかなか判断しづらいところでもあります。そうした部分を、建築士が建築主に代わって適宜検査していくことを「監理」と言いますが、工事が始まってからはこの「監理」が重要になってくるという訳です。
建築士・設計事務所というと、間取りを考える「設計」がメインのような気がしてしまいますが、工事が始まってからの「監理」もきちんとしてくれる信頼できる専門家を見つけることが、安全・安心な住まいをつくるための近道になってきます。
さまざまな情報を見て、実際に会って話を聞いてみて、自分に合う専門家をぜひ見つけてみてくださいね。
※この記事は、2010年6月に書いた内容を2019年6月にリライトしたものです。
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