2023年7月31日(月)に福島県桑折町にて、「相続登記セミナー」を開催しました。これは空き家・空き店舗対策に積極的に取り組んでいる専門家集団「桑折まちづくりネット」が主催したもので、桑折町も共催。

「空き家対策とはあまり関係ないんじゃ?」と感じる方も多いかと思いますが、いざ空き家を人手に渡そうと登記簿を調べてみると【実は登記されていなかった】【登記はされていたが、亡くなった曾祖父の名前のままだった】など、登記の状態に問題があることも多かったりします。

また来年4月から相続登記が義務化されることもあり、その辺のお話も詳しくお聞きするべく、福島地方法務局の統括登記官を講師にお招きしたところです。

所有者不明土地の解消に向けた取り組みの一環が「相続登記義務化」

まず始めに押さえておきたいのは、「相続登記義務化」は所有者不明土地の解消に向けた取り組みの一環だということです。

「所有者不明土地」というのは、登記簿を見ても現在の所有者が分からなかったり、分かったとしてもその所在が分からない土地のことを言います。2018年時点のデータですが、日本全国で約2億筆の土地がある中で、所有者不明率は何と20.3%にも。対策を講じなければ、2040年には所有者不明土地が北海道の面積に匹敵するものになると言われています。

この「所有者不明土地」の何が問題かというと、土地の管理がきちんとされないため、草木が伸び放題になったり建物が朽ち果ててきたりと、景観や安全面で悪影響が出てきてしまうということです。持ち主がハッキリしている場合は改善を求めることもできますが、所有者不明の場合はそれもできず、勝手に手出しをすることもできないという状態に。そんな場所が自分の家の近くにあったら嫌ですよね。

そうした問題を解決するために、国は3つの柱をを考えています。


1.不動産登記ルールの見直し
相続登記・住所変更登記の申請義務化および手続きの簡素化

2.土地を手放すルールの創設
相続で土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて土地の所有権を国庫に帰属させる制度の創設

3.民法ルールの見直し
所有者不明土地・建物管理制度等の創設
共有者が不明な場合の共有不動産利用の円滑化


中にはまだ詳細が決まっていないものもあるようですが、「相続登記の義務化」はこうした流れの中にあると言えます。

相続登記の義務化は、過去に相続したものも対象に

そうした説明を受ける中で気になったのは、来年4月の相続登記義務化以降に相続したものはもちろん対象になるでしょうが、過去に相続して登記を変更せずそのままになっているものはどうなるんだろう・・・・ということ。

これはセミナーの中で明確に説明があり、過去に相続したものも登記を行う対象になるということです。また義務化の基本ルールとして


■不動産を相続・遺贈により取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。

■正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処される。


といった規定が適用されることになります。

上記以外にも制度改正で変更・見直しになる部分がありますので、詳しくは下記リンク先をチェックしてみてください。

知っていますか?相続登記の申請義務化について(宇都宮地方法務局HP内)

いかがでしたでしょうか? 相続登記をしなければいけない機会はそうある訳ではないですが、親が高齢期を迎える世代の方にとっては意外に身近な問題になってきます。いざというときに慌てることのないよう、ぜひ知識として押さえておいていただければと思います。