古い実家の耐震改修、あなたはお金出しますか?

先日参加した木造住宅の耐震診断に関する会議で話題の1つに挙がったのが、耐震改修の実施件数を増やすためにはどうしていったら良いか?という話でした。

おの設計では、1年に5~10件程度の耐震診断を行っており、延べ100件以上の数を診断してきました。ですがそこから耐震改修を行ったのは、10件にも満たない程度。診断で悪い数字が出て、それに対する対応策として改修計画もお出しするものの、改修に至るのは10%未満という訳です。

冒頭に述べた会議では「改修費用が高くネックになっているから、安く改修できる工法を採用していこう」という話が出ていました。確かに、おの設計で改修計画を出してきたものを思い返してみると、500万~800万円程度の概算費用になるとが多かった気がします。耐震診断を行っている住宅は、そのほとんどが昭和56年以前に建てられた古い基準の建物。今の基準まで引き上げる耐震改修を実施しようとすれば、自ずと改修個所も増える=費用も高くなるという形になってしまいます。

ただ、その費用面より私がネックだと感じているのは

「診断をした住宅は、将来的に誰がお住まいになりますか?」

という部分です。

先程述べたように、耐震診断を行う住宅は昭和56年以前に建てられたものがほとんど。お住まいになっているのは、70代前後のご夫婦もしくはおひとりの方というパターンが非常に多いです。これは、子世帯は実家とは別に家を建てて住むのが当たり前という現在の世相を反映した形であり、福島県に限らず全国各地で同様の状況かと思います。

そうすると、今ここで数百万円をかけて耐震改修を行ったとしても、自分たちが亡くなってしまえば家を継ぐ人は誰もいない状態。そこに多額の費用をかける訳にはいかないというのは、ごく自然な感情かと思います。おの設計で耐震改修に携わったところでは、やはり比較的若い世代が住んでいる・子世代が一緒に暮らしているというパターンがほとんどでした。

「費用が安ければ良い」というのは、確かにそうだとは思います。ただその住宅の「行く末」がどうなっているのか=家を継ぐ人がいるのかどうかというのは、費用以上に大きなポイントではないでしょうか。

使う当てのない古い実家に、あなたは多額の費用をかけることができますか?

今住んでいる親世代が亡くなった後、子世代が移り住むというのであれば何の問題もないでしょう。身内で誰も使う当てがない場合にどうするか。「住まいの終活」をしっかりしておくことが、耐震改修を推し進める上でも、また空き家を減らす上でも大切ではないかと感じるところです。